全国の児童養護施設から大学や短大、専門学校への進学をめざす生徒を支援するため、事業団では1998年に、「読売光と愛・郡司ひさゑ奨学基金」を設立しました。これは97年8月に「進学のかなわぬ子供たちのために役立てて」と遺言し、亡くなられた郡司ひさゑさん(東京・渋谷)の寄贈遺産に基づくものです。毎年、作文を中心とした選考で十人前後の生徒に奨学金を支給しています。募集要項は8月中旬ごろに発表し、年末までに採用予定者を内定します。児童養護施設で育ててもらったことに感謝し、将来は、教育や介護関係の職につきたいと希望する奨学生が多く、夢の実現に向けて一生懸命勉強しています。
しかし、全国に575か所ある児童養護施設からの奨学金助成の応募は毎年百人前後もあるのに、資金的制約から奨学生に選ばれるのは一割程度なのが実情です。元々、家族の支援が期待できないうえ、高校を卒業すると施設を出ていかなければならない子供たちにとって、進学の道はとても厳しいものがあります。事業団では、逆境にめげず熱い進学の志を持つ子供たちのために、足ながおじさん・おばさんとして基金に資金援助してくださる方を募っています。
基金にご支援いただける方は、事業団にご連絡ください
(電 話03-6226-7633、E-Mail:hikari-ai@yomiuri.com)

イラスト・「希望の家」園児
全国の児童養護施設から大学や専門学校への進学をめざす生徒に、学費を助成する読売光と愛・郡司ひさゑ奨学基金は、全国97人の応募者の中から2011年度進学の第13回奨学生10人(大学4人、短大1人、専門学校6人)が決まり、4月から大学や専門学校で学び始めました。
男女5人ずつの新奨学生の進学先は北海道から鹿児島まで全国に広がっています。将来の志望は、市民の身近な法律家になりたい、大学で会計学を修めたい、老人ホームで介護の仕事につきたいなど様々。看護師になって国内外の医療の不足している地域で働きたいという男子、ロボットの技術者になって日本の工業発展に尽くしたいという女子など、性別にこだわらず明確な目標を持った奨学生も少なくありません。施設を出て、アルバイトで自活しながらの学業になりますが、みんな、それぞれの夢に向かって張り切っています。
また、先輩奨学生からも、4月から大手商社やゲームソフトの会社に就職したり、高等専門学校の教職につくなど、それぞれの分野で活躍しているとの報告が届いています。
児童養護施設から大学や専門学校に進学した若者が勉学や生活の体験をつづったエッセイ集『夢をかなえる力―児童養護施設を巣立った子どもたちの進学と自立の物語』が8月、明石書店から出版されました。虐待の増加など子どもの人権擁護が社会問題化している中、児童養護施設に暮らす子どもたちへの理解を深めてもらうため、昨年春に事業団が刊行した私家版の体験集『I have a dream』をもとに大幅加筆しました。
執筆者は、事業団が運営する読売光と愛・郡司ひさゑ奨学金を受け、この11年間に全国の施設で高校を卒業し、進学した男女42人です。学生のほか、すでに社会に出て看護師や保育士、美容師、エンジニア、大学の研究者などとして活躍しているOBの方も多数寄稿してくれました。両親の病気や離婚、虐待などさまざま理由から家庭で暮らせず、児童養護施設で育った子どもたちの大学等への進学率は、一般進学率の五分の一に過ぎません。
本書にはそうした逆境を乗り越えて進学し、自分の将来の夢を果たすため、苦学しながら一生懸命に生き抜く若者たちの日々の喜怒哀楽、自立の苦労と喜び、社会に対する思いなどがつづられています。また、自分で選んだ進路で思い切り学べる幸せやかけがいのない友や先生との出会い、これまでを支えてくれた人たちへの感謝の思い。さらには同じ境遇に育つ後輩たちに、トラブルを乗り越える知恵や、道を切り開く具体的なアドバイスを寄せる心のやさしさ、強さは胸を打つものがあります。四六版、244ページ。全国の書店でお求めください。
奨学生が体験をつづり刊行された本
児童養護施設を出て、さらに大学や専門学校に進学して学ぶ読売光と愛・郡司ひさゑ奨学生やOBから届いた便りの一部を紹介します。アルバイトに追われながらの勉強は大変ですが、みんな大きな夢に向かって日々、たくましく成長しています。( )内は、在籍学校、出身施設の所在地 性別<男♂ 女♀>
介護の仕事は私の天職です (介護士 大阪 ♀)
社会に出て、介護のお仕事をして3年目の今、色々と思い、感じる事があります。施設にいる時は、親のいない施設で育った人間が社会に受け入れてもらえるか不安でしたが、実際に社会に出るとそのような事はまったく関係なく、不安はすぐになくなりました。一生懸命ひた向きに仕事をすれば必ず評価してもらえ、受け入れてもらえます。
社会に出て、多くの人に出逢い、刺激される自分が居ます。過去は、自分自身を積み重ねてきた大切な時間ではありますが、そこに心や気持ちを縛り付け、なかなか前に進めずにいれば、何も得ることはできないのだと感じます。 介護の仕事は私にとって天職で、辛い事やしんどい事も沢山ありますが、「ありがとう」の言葉に勇気を、元気をもらいます。
職場の規模は小さいですが、利用者様一人ひとりと親近感を持ち、仕事ができます。中には真剣に「孫と結婚してくれないか?」とお願いしてこられる方や、私の手を握って、寝てしまう方など色々な人がいて、ほっこりすることが沢山あります。何十年と生きて来られた方々の最終ステージ、一回でも多く、笑顔で過ごして頂けるよう、寄り添う気持ちを忘れず、私自身も笑顔で毎日を送りたいと思います。
家族の力になりたい! (大学総合福祉学部4年 千葉 ♀)
大学生活も残りわずか。福祉の勉強を主にしてきたので、自分の生い立ちとかぶってしまい、辛いときもたくさんありました。そんな時に背中を押してくれたのは両親(里親)でした。中学、高校時代も不登校になってしまいそうな時がありましたが、ずっと見守ってくれていた両親には感謝の気持ちでいっぱいです。生い立ちは変えることはできないのだから、この生い立ちも含めて私の人生そのものなのだと、今では考えられるようになりました。
私には中学三年生の里子の弟がいますが、弟をみていると昔の自分を思い出します。同じようなことで困っていたら、私も家族として弟を支えていきたいと思っています。これから先は助けられてばかりでなく、家族の力になれるように成長していきたいと思います。
刺激いっぱい、感性磨く日々 (大学芸術学部1年 東京 ♀)
入居した学生寮で友達もでき、別の学科の人と話をしたり、遊んだり、教えてもらったり、色々な刺激を受けています。志望のCGクリエーターになるには感性や発想が要求されるので、最高の大学生活を送れる場所だと思います。授業は、ほとんど専門的なことや実技なので課題をこなすのが大変。高校生生活がどれほど楽だったか!
しかし、課題を提出しおえた時の達成感、現場でアニメーションを作っていた先生方に講評会でアドバイスしてもらえる嬉しさ、やりたいことが学べる楽しさ、この3つを考えると、入学でき本当によかった。メリハリある生活で技術や感性を磨き、卒業制作時には人を驚かす作品を作りたいと思っています。
出身施設で学習ボランティア (大学社会福祉学部3年 京都 ♀)
大学生活三年目を迎え、授業時間が減り、空き時間が増えたため、以前から続けているガイドヘルパーのアルバイトをする時間も増えました。講義も大切ですが、実際に自分が経験することで、さらに理解が増すように感じます。また、空き時間を利用して、以前生活していた児童養護施設で、学習ボランティアとして子どもたちに勉強を教えています。
自分が生活していた頃は、集団生活の中でイライラすることも多く、職員などに対して冷たい態度をとることも多かったのですが、今、少し距離を置いた状態で関わると、当時よりも周りをよく見ることができ、とても楽な気持ちで関われるようになりました。また、一度離れて施設での生活を振り返ると、不安や不満、葛藤など、子どもたちが抱えている気持ちがよくわかり、中高生の話にも耳を傾けられるようになりました。自分の経験を活かし、今後も関わっていけたらと思います。
外科病棟で働いています(看護師 岩手 ♀)
外科病棟に配属され、手術前後の患者様のケア、化学療法を受ける方や癌の終末期の方の看護を中心に働いています。やっと仕事の流れも覚えましたが、三交代制なので生活リズムを作るのが難しく、昼夜逆転してしまう日も。その中で患者様やご家族に、「あなたの笑顔を見ると安心する、励まされる」と言われると、初心を思い出し、仕事の楽しさ、やりがいを強く感じます。
児童養護施設から社会へ巣立つ子どもたちの支援をしている団体にもボランティアで参加しました。施設OBだからこそ出来ることがあるのではと思ったからです。子どもたちに勇気と自信をあげられたらと思っています。
研究員として大学に赴任(大学院生 東京 ♀)
4月から大学院を休学し、特別研究員としてM大学に赴任しました。環境が変わり、緊張の連続でしたが、ようやく慣れてきました。良き同僚や先輩にも恵まれ、地域医療・福祉の地域発展プロジェクトのメンバーとして、調査や統計処理をし、論文を書いています。福祉・医療現場で働く方との勉強会に参加し、医療崩壊など地方の困難な現状に驚いたり、東京中心的な考え方を覆されたり、新しい体験の連続です。
乳児院、施設育ちの私にとって東京を離れるのは勇気がいるものでした。戻る場所がないように思えて怖かったからです。でも本当の家族のように接してくれる先生のご一家が、「いつでも帰っておいで」と送り出してくれました。その“家族”と離れて初めて、ダメな点も含め、そのままの自分を愛してくれていることに気付けました。そしたら何だか無性に自分が好きになり、自分の幸せを考えてみたくなりました。いつも「自分はダメな人間で、もう死んだ方がいい」と否定的だった私の大きな変化でした。将来の不安に耐え、歩き続けてこられたのは大勢の方が支えてくださり、希望をなくさないできたからです。これからは、ほかの人の希望の光を守れる人になれればいいなと思っています。
これまでに郡司ひさゑ奨学金を受けて、進学した児童養護施設出身の生徒は、140人を超えています。福祉、教育、看護方面の志望が目立ちますが、理工系に進んで将来はビルゲーツのようにITのベンチャー企業を起こしたい、海外に出て世界の難民や環境保護のために働きたいという若者もいます。一方では、料理やお菓子など食の分野や、理美容、ペットビジネスなどの専門学校に進む人もいて、多彩な夢の実現に向け、みんながんばっています。
| 2011年度進学 | 釧路公立大学経済学部 |
| 早稲田大学文学部 | |
| 日本大学商学部 | |
| 鹿児島大学法文学部 | |
| 大阪千代田短期大学 | |
| 安達文化学園 | |
| 昭和の森看護学校 | |
| エコール辻大阪 | |
| 天理看護学院 | |
| ポリテクカレッジ川内 | |
| 2010年度進学 | 群馬大学教育学部 |
| 東京工芸大学芸術学部 | |
| 慶應義塾大学法学部 | |
| 相模女子大学栄養科学部 | |
| 同志社大学社会学部 | |
| 関西学院大学人間福祉学部 | |
| 白梅学園短期大学 | |
| 美作大学短期大学 | |
| 日本ペット&アニマル専門学校 | |
| 大分中央看護学校 | |
| 2009年度進学 | 東京学芸大教育学部 |
| 大阪大谷大学文学部 | |
| 九州大学理学部 | |
| 上智短期大学 | |
| 尚絅短期大学 | |
| 東九州短期大学 | |
| 郡山准看護師高等専修学校 | |
| 神田外語学院 | |
| 京都府立看護学校 | |
| 2008年度進学 | 東京農業大学大学院 |
| 城西国際大学総合福祉学部 | |
| 東洋大学文学部 | |
| 東京福祉大学社会福祉学部 | |
| 仏教大学社会福祉学部 | |
| 藍野大学医療保健学部 | |
| 国際学院短期大学 | |
| 鹿児島医療技術専門学校 | |
| 土浦協同病院付属看護専門学校 | |
| 御茶ノ水美術専門学校 | |
| 2007年度進学 | 明治学院大経営学部 |
| 城西大学経営学部 | |
| 静岡大学情報学部 | |
| 神戸芸術工科大学 | |
| 淑徳短期大学 | |
| 沼津工業高等専門学校 | |
| 国際フード専門学校 | |
| 富山ビューティカレッジ | |
| 姫路福祉保育専門学校 | |
| 福岡カレッジオブビジネス | |
| 福岡国際医療福祉学院 | |
| 2006年度進学 | 一橋大学法学部 |
| 東海学園大学経営学部 | |
| 九州大学21世紀プログラム | |
| 琉球大学法文学部 | |
| 東京農業大学短期大学 | |
| 常葉学園短期大学 | |
| 東京エアトラベル・ホテル専門学校 | |
| 横浜医療センター附属看護学校 | |
| 日本農業実践学園 | |
| 愛知調理専門学校 | |
| 山口県立萩看護学校 |
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