読売福祉文化賞

第14回読売福祉文化賞の受賞6団体を表彰(2016年12月)

 福祉文化賞マーク.jpg新しい時代にふさわしい福祉活動に取り組んでいる団体などを顕彰する「第14回読売福祉文化賞」(主催:読売新聞社、読売光と愛の事業団、後援:厚生労働省、日本福祉文化学会)の受賞6団体が決まり、12月8日に読売新聞東京本社内で受賞式が行われました。各団体には事業団の長尾立子理事長から記念のトロフィーが手渡され、活動資金として100万円が贈られました。

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 受賞団体は次の通りです。
【一般部門】札幌いちご会▽シアター・アクセシビリティ・ネットワーク▽チャイルドファーストジャパン
【高齢者福祉部門】グループゆう▽箱の浦自治会まちづくり協議会▽抱樸(ほうぼく)

                 各団体の活動内容などは12月6日の読売新聞で詳しく紹介されました。記事を転載します。

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 ※各団体の写真は、左が紙面掲載の写真、右が贈呈式後の昼食会での各団体の挨拶の様子


NPO法人札幌いちご会(札幌市西区) 障害者 自立できる街に

 どんなに障害が重くても街の中で自立した生活ができる社会を目指し、1977年から活動を続ける。障害者が適切なケアを受けられるヘルパー制度や地下鉄駅へのエレベーターの整備、障害者用トイレの設置などを訴え、実現させてきた。
 理事長の小山内美智子さん(63)は脳性小児まひで体を自由に動かせない。家族には「障害者が自立して生活するなんて、できるわけがない」と言われた。しかし、79年に福祉制度が充実しているスウェーデンを訪れ、障害者が当然のように働き、街に出歩く光景を目にし、「日本でも障害者が自由に暮らせるようにしなければ」と決意した。
 小山内さんは「何でもやってもらうことがケアではない。障害者自身も、どのようなケアが必要なのかを考えて、ヘルパーに伝える努力が必要だ」と話す。それが障害者の自立した生活につながるからだ。
 いちご会の職員とボランティアらは計約20人。今年8月にはヘルパーの派遣などを行う事業所を開設した。小山内さんは「障害者が野菜の栽培や販売をしたり、ヘルパーが勉強したりでき、みんなが楽しめる地域に根ざした場所をつくりたい」と将来の夢を語った。
(北海道支社 井上雄太) 


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スタッフらと談笑する小山内さん(中央)                      スピーチをする小山内さん(左)

 
NPO法人シアター・アクセシビリティ・ネットワーク(東京都世田谷区) 観劇 手話で楽しむ

 聴覚、視覚障害者のための観劇支援団体として、舞台の字幕制作や 受け付け対応をサポートするほか、手話通訳や字幕の勉強会を通じて支援方法の研究も行う。実働スタッフは約20人。聴覚障害のある理事長の廣川麻子さん(43)は「観劇をサポートするという考え方を国内に広めたい」と語る。
 小学生から演劇に親しんだ廣川さんは、大学4年の1994年に「日本ろう者劇団」に入団。2009年からは約1年間、ロンドンの障害者劇団を拠点に研修し、有名ミュージカルなど60本以上を観劇した。手話通訳や字幕が充実し、同時進行で楽しめたことに感激した。
 一方で、日本では字幕などの支援は乏しく、台本の貸し出しを断られることもあった。廣川さんは「日本の観劇環境の貧しさを思い知った」と振り返る。帰国後、障害があっても観劇が楽しめる環境を整えるため12年12月に任意団体として発足させ、翌年にNPO法人に。字幕や台本の貸し出しのサポートがある公演情報を集めたウェブサイトを開設。劇団などにも観劇支援を呼びかける。
廣川さんは「誰もが演劇を楽しみ、豊かな文化生活が送れるようにしたい」と夢を描いている。
(東京社会部・大原圭二)

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手話でスタッフと打ち合わせをする廣川さん(左)                手話でスピーチをする廣川さん(左)                                                                                    


NPO法人チャイルドファーストジャパン(神奈川県伊勢原市) 虐待防止 子供第一で

 小田急線伊勢原駅南口近くのビルの一室には、虐待を受けるなどした子供たちが被害事実の聴き取りのための面接を受けに来る。ドアを開けると大きなクマやピカチュウのぬいぐるみが出迎える。隣の面接室に入る前にリラックスさせるためだ。
 最大の特色は、診察室が併設され、子供からの聴き取りと、診察や検査を一か所で行うワンストップセンターであること。専門面接者と子供のやり取りを、児童相談所、警察、検察がモニターすることで、聴取で同じやり取りが繰り返されることがなくなり、子供への負担を減らせるという。
 こうした面接のほか、相談、研修、啓発、専門家派遣まで幅広い業務を約30人でこなす。
 19年前、隣の秦野市で起きた乳児虐待死事件をきっかけに、前身となるボランティア団体が生まれた。虐待はあっても事件になることは少なく、犯罪を立証する警察といかに連携するかに心を砕いてきた。
 理事長の山田不二子さん(56)は「運営資金などまだまだ課題は多いが、名前の通り、子供最優先の姿勢で今後も取り組んでいく」と話す。
(横浜支局 中村良平)

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専用の人形で子供に被害を再現してもらうという山田さん          挨拶をする事務局長の楠本咲子さん(右)


NPO法人グループゆう(仙台市泉区) 家事や介助 助け合い

 40歳代の主婦ら十数人による配食サービスから出発し、今では高齢者の在宅介護や障害児の放課後デイサービスなどの幅広い活動に、職員とボランティア総勢約80人が携わる。サービス利用者は200人前後に上る。
食の安全を考える地域の市民グループが前身。1995年に任意団体を設立し、高齢者に弁当を1日1食運ぶうちに、「布団が干せない」「電球が交換できない」など、日常の悩みを聞くようになった。登録制の家事援助を始めると、配食サービス以外では人と話す機会がないとこぼす利用者の話から、交流の場としてサロンを開いた。障害児の母親からは「片時も我が子から目を離せない」との悩みも寄せられ、放課後のデイサービスや自立を手助けする就労支援も導入した。
 既存の制度で対応できない場合は助け合い活動などで補う。地域のシニア世代や子育て中の主婦、学生などがボランティアとして、料理の腕を振るう「ワンデイシェフ」や、健康マージャンの指導などをする。
 「『誰かのため』が『将来の自分のため』になると思い、皆が参加してくれている。この循環を次の世代にも渡したい」。代表理事の中村祥子さん(67)は力を込める。
(東北総局 田辺里咲)

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 サロンの紅茶教室に参加し、談笑する利用者ら                 代表理事の中村さん(中央)

 
箱の浦自治会まちづくり協議会(大阪府阪南市) 空き家にサロン 「朝市」も

 約40年前に住宅地として開発された地元の大きな課題は、住民の高齢化。対応に頭を悩ませていた地元の有志たちが中心となってまちづくり協議会を設立、2012年に交流拠点「おしゃべりサロン」を開設した。
 サロンは空き家を賃借し、喫茶店風に改装。家賃や光熱費は協議会でまかなう。週に3日、開店し、コーヒー1杯を100円で提供。出かける場所がなく、家に閉じこもりがちだった住民たちが歓談に訪れ、年間約6000人が利用している。
 市の中心部から離れていることから、買い物に不自由を感じている住民も多いが、協議会は、毎週土曜にサロンの庭で「朝市」を開き、鮮魚や野菜などを格安で販売。買い物困難地域の解消に向けても取り組む。
 独り暮らしの高齢者たちに大勢での昼食を楽しんでもらう事業や、子どもたちと高齢者たちとをつなぐ餅つき大会などの行事も開催。どれも住民主体で取り組んでおり、協議会の岡保正会長(79)は「『箱の浦のことは箱の浦で解決する』がモットー。子どもたちには、箱の浦で育ってよかったと思ってもらいたいし、高齢になっても住み続けることができる街にしたい」と話す。
(大阪社会部・斎藤孔成)

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 空き屋を改装し、喫茶店風にしたおしゃべりサロン                会長の岡さん


 NPO法人抱樸(ほうぼく)(北九州市八幡東区) 2800人 路上生活から復帰

 路上生活者の生活や就労を支える「ホームレス自立支援センター北九州」や入居施設「抱樸館」などを運営している。これまで約2800人の自立につなげてきた。
 活動を始めたのは1988年12月。ボランティア数人で、路上生活者におにぎりを配ることからのスタートだった。2004年には、北九州市の委託事業としてセンターを開設。居住施設を備えており、原則として半年間、受け入れている。
 自立支援では、本人の生活歴や希望を踏まえ、一人一人に合ったプランを作成。日常生活訓練に加え、センター内にあるハローワークを通じて就労を支援する。退所後もスタッフが定期的に相談に応じたり、退所者同士の交流の場を設けたりして、再び路上生活に戻ることのないよう目を配っている。
 こうした支援にとどまらず、抱樸館では身寄りのない高齢者のほか、知的障害や精神疾患がある人も受け入れている。
センターの山田耕司施設長(42)は「生活困窮者など現代社会が直面する問題は山積している。地域や社会の理解を得ながら、活動を続けていきたい」と意気込む。
(北九州総本部 高田佳明)

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利用者の相談に応じるスタッフ                          理事長の奥田さん

  読売福祉文化賞の選考委員は次の方々です。
 安藤雄太 東京ボランティア・市民活動センターアドバイザー
 栗原小巻 女優
 袖井孝子 シニア社会学会会長
 高木憲司 和洋女子大学准教授
 馬場 清 日本グッド・トイ委員会事務局長
 保高芳昭 読売新聞東京本社編集委員