読売福祉文化賞

読売福祉文化賞2012年の受賞者(2012年12月)

 読売福祉文化賞2012年は、全国から136件の応募があり、受賞者1個人、5団体が決まりました。一般部門は、東日本大震災を乗り越えて「さをり織り」で障害者の就労などを支援する宮城県石巻市の「輝くなかまチャレンジド」など2団体と1個人、高齢者部門では、お年寄りの自宅で修学旅行生を受け入れる民泊事業を展開する沖縄県宮古島市の「いけま福祉支援センター」など3団体が選ばれました。

<一般部門>


▽NPO法人輝くなかまチャレンジド
(宮城県石巻市)
 「家にこもりがちな障害のある方たちを受け入れる場にしたい」。2005年、長女が障害で悩んでいたという熊井睦子施設長(55)らが法人を設立しました。「織りによる自己表現」と「製品化による就労支援」の両立を活動の軸に据え、小規模作業所を開きました。
 宮城県石巻市や女川町の障害を持つ人たちに週5日、織機を使って手軽に自己表現できるという「さをり織り」を教え、マフラーやスリッパ、小銭入れなどを商品化しました。スタッフは6人で、21人のメンバーが活動しています。
 震災で石巻市沿岸は津波に襲われ、活動の拠点を失いました。昨年8月、仮設住宅の集会所で本格的に再開しました。新たな絆も生まれたそうです。食事会や茶道教室など、新たな取り組みを通じて仮設住民との交流が深まりました。ボランティアとの輪が広がり、商品が東京都調布市の観光案内所や名古屋市内の福祉関連施設で並びます。売り上げは施設再建の費用に充てる予定です。
 熊井施設長は「震災で『もうダメかも』と思っていただけに、受賞は励みになる。全国からの多くの支援に感謝したい」と話しています。

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さをり織りづくりに取り組むメンバー

▽NPO法人ぱれっと(東京都)
 プロのデザイナーや演出家、学生ら約100人が協力し、知的障害者らと健常者が、鮮やかな衣装に身を包んでダンスを披露するファッションショー「ぱれコレ」を7月に開きました。
 運営の中心を担ったのは、「ぱれっと」職員の左右木(そうき)歩さん(32)。主催するダンス教室で、音楽に合わせて即興で踊る障害者の姿を目の当たりにして驚きました。この経験から「豊かな表現力があることを多くの人に知ってもらいたい」と今回のショーを企画しました。
 出演者は太陽や雲、炎などをイメージした衣装と音楽に合わせ、思い思いに体全体を使って表現。約300人の観客からは「エネルギーを感じる」「明るく力強い」といった感想が相次いだそうです。1983年に知的障害などがある人と健常者との交流の場を作ろうと設立。その後、焼き菓子を製造・販売する福祉作業所を開き、今では障害者らの自立した生活をサポートするグループホームの運営にまで活動の幅を広げています。
 理事長の相馬宏昭さん(48)は「社会に強い印象を与えられるイベントを今後も考えたい」と話しています。

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盛り上がったファッションショー「ぱれコレ」(ぱれっと提供)

▽竹内昌彦さん 67(岡山市)
 「モンゴルにいる視覚障害者1万人のうち、仕事に就いている人はごくわずか」。日本に留学して鍼灸(しんきゅう)師の資格を取得したモンゴル人男性の話を聞き、「自立するきっかけをつくりたい」と昨年3月、私費を投じてモンゴル・ウランバートルに視覚障害者の職業訓練センターを設立しました。
 自身も1歳の時に患った肺炎が原因で失明しました。岡山県立岡山盲学校から大学に進み、1968年から約37年、同盲学校の教諭、教頭を務めました。同じ境遇の生徒たちに建築設計技師になりたかった夢を語りながら、「愚痴を言う前に一生懸命取り組めば、どんな仕事でも輝くものがみつかる」と諭してきたそうです。
 センター建設費約830万円は、障害者への理解を深めてもらおうと、91年から続けてきた講演の講師料と著書の売上金。「良い使い道があるはず」と、手をつけずにいた。
 センターには研修期間が半年と1年の2コースを設置。1期生30人は鍼灸院などで働き、「手に職をつけ、結婚して家を建てられた」という卒業生の言葉が忘れられないそうです。

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これまでの活動を振り返る竹内さん
 
<高齢者福祉部門>


▽NPO法人下宿屋バンク
(横浜市)
 横浜市瀬谷区の住宅街に来春、外壁がピンク色のかわいらしい木造2階建て住宅が誕生します。「下宿屋バンク」が新事業として始める市民共同キッチン「となりの台所」。一人では買い物や調理が面倒というお年寄りに仲間と一緒に料理や食事を楽しんでもらうための施設です。高齢者の「孤食」が増える中、豊かな食生活や地域の縁を取り戻すことが目的です。
 バンクは、事務局長の崎野早苗さん(64)がホームヘルパーをしていた際、「高齢者の孤立化」という問題を痛感し、1997年に設立しました。これまで、空き家などを活用した高齢者向け共生型住宅「シェアハウス」の仲介や普及活動などに取り組んでいます。
 「入り口はスロープにしてください」「トイレには手すりを」――。崎野さんは現在、「となりの台所」の着工に向け、業者との打ち合わせに余念がありません。施設はモデル事業として横浜市から補助を受け、崎野さんの自宅を取り壊し、その跡地に建てられます。
 完成時には、施設や地域の「食」について紹介する情報誌も周辺世帯に無料配布します。崎野さんは「一つ屋根の下で、高齢者が同じ釜の飯を食べられる地域の台所を作ります」と笑顔を見せました。

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情報誌について打ち合わせるメンバー

▽NPO法人摂津市人材サポート・ビューロー(大阪府摂津市)
 「ええ天気やな」「元気してるか」。お年寄り宅に、昼食の手作り弁当を配達すると、自然と会話が生まれます。よそ行きの服を着て、弁当を待つ人もいるそうです。手作り弁当店「キッチン・こらぼ」は毎日、体の不自由な一人暮らしの高齢者宅約50軒を回ります。配達担当の堀博三さん(76)は「この年で社会参加し、『ご苦労さま』と言ってもらうと、生きている感じがする」と喜びます。
 高齢化社会が進む中、お年寄りが社会貢献できる場を提供しようと、2009年9月にオープンしました。平均年齢70歳のスタッフ12人が、毎日交代で午前6時半から調理に腕を振るいます。定年までホテルのシェフや食堂の調理員として勤めたスタッフもいます。代表理事の北川照子さん(75)は「弁当を作るのも、受け取るのも高齢者。同世代で励まし合えるんです」と話します。
 弁当には食物繊維の多い根菜を使った煮物など、野菜を中心に7品目以上のおかずを盛りつけ、「おふくろの味」を大切にしています。弁当を注文する人からは「病院へ行く回数が減った」「便秘が治った」などと好評。スタッフからも年金以外に賃金を得ることで「かみさんに何か買ってやれる」と喜ぶ声は多いそうです。
 北川さんは「手に職を持った健康なお年寄りはたくさんいる。夕食も販売するなど、活躍できる場を広げていきたい」と話しています。

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弁当と一緒に元気も届けるスタッフ

▽NPO法人いけま福祉支援センター(沖縄県宮古島市)
 エメラルドグリーンの海が広がる池間島のお年寄り宅に全国の修学旅行生を受け入れる民泊事業が、今年度から本格的にスタートしました。高齢者は生きがいを取り戻し、子どもたちは島の暮らしを体験しながら“おじい”“おばあ”から多くのことを学びます。お年寄りが主役の島おこしとして注目が集まっています。
 11月8~10日には、滋賀県の県立高校2年生358人がやってきました。約70軒のお年寄り宅に分かれ、それぞれ昼間は魚釣りや農作業に出かけ、一緒に夕食を作り、夜遅くまでだんらんを楽しみました。生徒5人を受け入れた上原マサ子さん(75)は「孫といるみたい。元気になるさ」と笑顔。生徒が島を離れる際は毎回、おじい、おばあと手を取り合い別れを惜しむ姿が見られます。
 今年度の引き受けは12月4日現在、6校計1573人。さらに来年2月末までに23校計5951人の予約が入っているそうです。
 島の人口は693人、高齢化率45%。受け入れ家庭は簡易宿泊施設の許可を得て、収入も入ります。前泊博美理事長(60)は「高齢者は島最大の資源。民泊は介護予防になり、雇用が生まれれば、島を離れた若者たちも戻ってくる」と波及効果に期待しています。

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ホスト役のお年寄りと写真撮影する生徒